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認知症の不安な心の疑似体験2015年12月10日
“~~あなたが新月の暗黒の中で、声をかけられたら~~”
もし、あなたが、夜中、田舎の田んぼに囲まれた、月明かりもない、新月の漆黒と静寂の暗闇の中の一本道を、帰宅を急いでいると仮定しよう。
はや足で帰りを急いでいる時、その道の先には、明るく、自分の家族のまつ暖かい家を頭に描いているだろう。
その暗闇の、自分の足もとしか見えないような帰り道の暗闇の中から自分の不安な心の解決とは関係ない、聞き慣れない馴染みもない声を突然掛けられたとしたら、どうだろうか。
他方、その人の置かれている状況はというと、足もとしか見えない周辺は一歩先も一歩後ろも見えない断崖絶壁を思わせるような暗黒だとしたら歩いて行く先は、どこかもわからない、奈落の不安しかないそこで馴染みのない声掛けされると、心臓が凍りつくような恐怖に襲われるだろう。
それが認知症者の心象風景である。
ある認知症の絵描きさんが、ご自分の心象風景を絵に描かれたことがある。
それは街灯の中、周りは漆黒の暗闇、街灯の下に佇む絵描きさんの足もとだけ三十センチだけが明るい。
前も後ろも右も左も墨を流したように黒く塗られた絵だった。これこそが認知症者の気持ちを見事にあ表している。
これを認知症の世界的研究実践者である前の聖マリアンナ医科大学理事長の長谷川和夫先生は、この不安というのは、「人類最大の不安」であると言われた。
大脳前頭葉の周辺判断中枢の障害がもたらす結果である。
この病気は、暗黒の不安と日々闘いながら生きている私たち福祉専門職がお世話している認知症の患者さんであり、施設の利用者さん、家族の肉親でもあります。
そのような方々のお世話には、その不安な心象風景を察し、不安から来る心の乱れを理解し受容し周辺症状にも対処しながら、それを受け入れて静かに接することができる力量が大切になる。
その方の歴史を知り、不安な心を病理から理解し、その声に耳を傾け、心の声をくみとり安心と馴染みを共有してゆくことです。
その根底からの理解のうえに、新しい認知症ケアが始まるのです。
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